ZK通信

ステージア WGNC34改 GT-SS ハイカム FコンVプロ仕様

過去の作業事例です。かなり以前の仕事でその時はfacebookで報告しましたが、今だからお話できる部分を追加して再報告します。

日○ディーラー様より、故障診断が難しくて困っている、ツァオバークラフトで診断、修理をして欲しいとのことで、お客様をご紹介頂きました。お電話頂いた時は吸排気交換にHKSのVプロがついているライトチューンの車両との事でした。オーナー様がご来店されお車の仕様をお伺いすると、予想以上にチューニングされていて、エンジン不調と、4駆のシステム異常が出ているので修理して欲しいとの事でした。

エンジンの方は、タービンやカムなど一通り変更され、Vプロで制御されています。詳しく調べていくと、部品を付けただけで、調整がされていない、もしくは調整不足の個所を多数発見します。また診断の為にもVプロの認識している値を見たいのですがVプロはロックされていて、アクセスできない為、他のVプロにとりあえずのデータを入力しVプロとパソコンを通信させ現状を把握します。その結果ハードを手直し調整しVプロを全てリセットし、再セッティングを行う事としました。

仕様からして当たり前なのですが燃料ポンプも変更され、ポンプの電源はバッテリーから直接とってありましたが、ポンプを動かすリレーの駆動電源が、リアワイパーのモーター電源から取ってあり、この部分もエンジン不調の原因となっていました。今だから言えますが、お客様へ問診をすると、この車2度エンジンブローしていた事実が分かります。そして申告されたのがリアワイパーを動かすとエンジンの調子がおかしくなると。お話しを伺ったときはそんな事あるの?と半信半疑でしたが、申告があったので詳しく検証しながら、リアワイパーを動かすと、確かにエンジンの調子がおかしくなります。それは燃料ポンプ駆動用リレーの電源線がリアワイパーモーター電源線に接続されていた為、リアワイパーを動かすと、燃料ポンプが止まるため。そしてリアワイパーが行って返ってきて止まると、再び燃料ポンプが動き出します。燃料ポンプ駆動電源の接続先を探したのでしょう、その辺一帯のありとあらゆる配線の被服がめくられ、そのままになっています。そしてリアワイパーが動いている間、燃料ポンプが止まり燃圧がドロップする間になるべく調子が悪い症状が出ないように燃料レギュレーターでイニシャルの燃圧がビックリするような圧に高められ、ごまかされていました。結果が分かれば手直しは簡単というか、そう大変なことではありませんが、この原因を突き止める為にかなりの機材、時間、頭を使っています。

ポンプリレーの駆動電源を取り直しし、被服のめくれたところはショートしないように絶縁処理をし、燃圧を適正に合わせ、エンジン始動すると、Vプロのデータがとりあえずのデータにも関わらず普通というか、かなり調子がよくなります。また依頼のあった4WDのシステム異常を診断すると信号の一部入力エラーを拾っていて、その究明の為、整備書、配線図とのにらめっことなりました。ディーラーからの紹介だったこともあり、ディーラーにお願いして配線図や、整備要領書などは一式お借りしました。この資料が無ければおそらく迷宮入りした事案だっただろうと今思い出しても感じます。またこの車両は改造申請してあり、純正ではない部分が有り、純正を理解してから目の前にある現車と見比べてと、かなりの時間と頭を要しました。結局原因は、ユニットへつながるカプラーへの水の浸入でしたが、そこを見つける為に、リアのユニットから、フロント左足元のエンジンコントロールユニットまでの内張りを全て取り外し、配線をず~とたどると言う、気の遠くなるような作業でした。
文章ではあっと言う間ですが、エンジン周りのハードの手直し、4WDの診断修理まで合わせるとかなりの時間を要しています。ハードの手直しが終了しいよいよセッティングと気分を新たに作業しますが何か違和感を感じます。お車お預かりした始めに調整し直した所を再度確認すると、おかしな値が出ます。こんな事は初めてですが、センサーが壊れかかっていました。調整しても時間が経つと適正値からはずれてしまいます。4WD異常の究明に時間がかかった事が幸いし、センサーの異常を発見できました。長期でお車お預かりしなかったら、見落としていた事でしょう。センサーを交換し、そこから先は車側(ハード)の調整が終わりましたので、いつも行っている、Vプロのデータ作成、セッティング(ソフト)と言う流れで、作業は終了となりました。

今回の結論は、ハードの確認、調整をしっかりしないまま、Vプロを取りけし、不具合の根本的な原因究明を困難にしていた。不具合原因は多数有るが大きな原因は、燃料ポンプ駆動用リレー電源線の配線ミス、調整した後も時間が経つと適性値をはずれてしまう微妙に壊れたセンサー&水の侵入による一部信号の途絶。結果2度のエンジンブロー。

コンピューターのセッティングと言うと、ソフトのデーターにばかり目が行きますが、まずはハード(車両)がしかっり整備、確認、調整されている事が必要となります。その部分の判断、調整には経験や、知識が必要です。今回のお車は、セッティングをする前の、整備、確認、調整部分の高度な応用問題の様で教材にしたいくらいのお車でした。仕上がり後、オーナー様に試乗頂いた感想は「車が軽くなってます、4000回転、5000回転と回転を上げると気持ちがいいです」と、とても喜ばれ終始ニコニコされていました。私は料理は苦手でしませんが、仮に私がとってもいい材料を使って、料理をしても、食べる事は出来ても、美味しい料理は出来ません。車造りも、それと同じで、下準備、調理の仕方、調味料を入れるタイミング、量、味見で美味しさや風合いが変わります。その辺が、車造り、チューニングの面白さでもあり、難しさでもあります。

チューニングパーツは付ければいいという物ではありません。またチューニングパーツには必ずデメリットが存在します。まず本当にそのパーツが必要なのかの吟味、付けたのであればちゃんと付いている事はもちろんの事、その後の調整がとても大切になります。お車を長期間お預かりしたことも有り、オーナー様への問診も多岐にわたりましたが、お車への強い愛情がありつつも、こんなものなのだろうとそのまま乗られていた感じがあり、本当の意味でのRB26を感じられた事はなかったのではないだろうかと言うのが正直な印象でした。

その後数年にわたり数回メールで何も問題ないとの報告を受けています。しっかり作ったチューニングカーは日ごろのメンテナンスをしっかりしていれば、長期にわたり楽しむことが出来ます。思い出しながら記事にしましたが、とても印象深いお車でした。

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