ZK通信

HKS クランク角センサーコンバージョンキット

BNR32GT-RにHKSクランク角センサーコンバージョンキット(メーカHP)を取付けしました。数年前からHKSに商品化を希望していた物がやっと出来上がりました

RB26を含めたRBエンジンが設計されたのは30年以上前、おそらく40年くらい前の事になると思います。その当時は今みたいに緻密な制御が出来るコンピューター等ありませんでしたし、キャブからインジェクションに変わっていく過程の時代です。そんな時代ですからクランクの角度はカムで一緒に検出すれば問題なかったのだと思います。ただ現代の車は軽のエンジンでもクランクの角度はクランクでカムの角度はカムで当たり前の様に検出されています。それなのに名機といわれるRB26はカムでクランクの角度まで一緒に検出しています

セッティングをしていて点火時期を2度ずらすと敏感な方は感じます。たった2度かも知れませんがその2度を感じる方がいるのは事実で、それはダイナパックなどの計測器で計測すると数字にハッキリと現われます。RB26がカムでクランクの角度を見ているという事はカム側ではクランクの半分の角度と言う事になります。具体的にはクランクで2度はカムでは1度です

そしてその角度を検出するカムはタイミングベルトと言うベルトで駆動されています。ベルトですから本当にわずかではありますが伸び縮みしますし、遊びもあります。またゆっくり回転が上昇している時と急激に回転が上昇する時ではベルトのたわみ方も違いますし、たわむなら同じ分だけたわんだままでいてくれるといいのですが、たわんで元に戻ってを繰り返しながらカムを回します。わずかな事かもしれませんが、先程も書いたようにカム側の1度はクランクでは2度です。仮にタイミングベルトが少しだけたわんでカム側で進み側1度遅れ側1度(合計2度)を行ったり来たりしながら回転が上昇するとクランク側では4度前後に動きながらクランクの角度を検出している事になります

またRBエンジンではその角度を検出するセンサーにスリットを切った光学センサー(内側の大きなスリットは気筒判別の一般的なカム検出用、外側の細かいスリットがクランク角度用)が使われていて回転が速くなればなるほどクランク角センサーは読み飛ばしをおこす事実がこれまでの検証で明らかになっています

その対策として社外のフルコンを使う事を前提にスリットの数を少なくしたディスク等が販売されています。ただこの方法ではカムでクランクの角度を検出している事には変わりはなく、タイミングベルトの伸びや遊びを介して検出している事に変わりありまん。エンジンはクランク2回転(720度)で1サイクルです。RB26は6気筒なのでクランク軸が720度回る間に6回、各シリンダーで燃焼が起こります。そして720度の起点が1番シリンダーの圧縮上死点を0度と決定し、点火のタイミング、燃料を吹き終わるタイミング等の制御が行われています。たとえばクランク角度で2度、カム角度で1度毎回同じ風に遅れるなら遅れる、進むなら進むで動いてくれればそれを見越してコンピュータのデータ作成をすれば良いのですが、どのタイミングでどの角度で遅れるのか進むのかはタイミングベルトの伸び、遊びに決定されてしまうのです。その為点火時期を上死点前10度とどんなに通信速度の速いコンピューターで指示しても本当に6気筒とも上死点前10度で点火されるかはカム軸上に接続されているクランク角センサーの読み取り角度に依存し、前述のタイミングベルトの伸びや遊び、センサーの読み飛ばしに左右され正確ではなかったのです。しかもどの気筒が微妙に進んでいるのか、はたまた逆に微妙に遅れているのか、あるいは正確に点火されるかは分からなかったのです。ものさしで長さを測る時に0点を前後にずらしながら測る人はいない様に、制御をする上でクランク角度が前後に動く事があってはいけないのです。 ただ残念ながら今までのRBエンジンはカム軸上でクランク角度を検出していると言う設計上のウィークポイントをかかえていました

前置きが長くなりましたが、そんなRB26の欠点をなくしてしまうパーツがこのクランク角センサーコンバージョンキットになります

クランク軸上にセンサーを追加しクランクの角度を直接検出しますので、ずれようがありません。点火時期10度と決めたら、クランクシャフトがねじれたりしない限り、6気筒とも10度で点火します。と言う事は6個の気筒が同じように燃焼する事につながります。どんなにエンジンの燃焼室の容積を合わせたり、サージタンクの形状を工夫して同じ様に空気が入る様にと作り込んでも、点火のタイミングが微妙にずれていたのものが、同じになります。しかも回転が上がれば上がるほどズレが大きくなっていた物がずれなくなります。正確にコンピューターからの指示通りに均等に120度ごとに6回燃焼が起こります。想像するだけで、なめらかにエンジンが回る事が容易に想像できます。そんな制御に拘れば拘るほど欲しいと思うパーツをHKSが創ってくれました。ここまで書くとHKS凄いってなりそうですが、僕が気が付く事ですからとっくにそんな事気が付いていて商品化している所が海外にはありました。それでもHKSが創る意味があるからと数年がかりでお願いしてやっと商品化してもらいました

取り付けに際してはタイミングベルト周りを取り外す必要がありますので、タイミングベルトはもちろんの事ベアリングやオイルシール、ウォーターポンプ等も一緒に交換しています

カム軸上には圧縮上死点検出用のセンサーを追加します

センサーからの配線をVproへ接続し

パラメーターをセンサーが変更になった部分に合わせて変更すると、あっさりとエンジン始動

あとはダイナパックしに設置し、いつも通りのセッティング

ダイナパックでのセッティング終了後は実走での確認と、データの小変更を行って作業終了となりました

セッティングの段階から、回転が今まで以上にスムーズに上昇していくこと、回した時の排気音が一段と澄んだ音になったことを感じていましたが、オーナー様にドライブしてもらったところ、非常に乗り易く回転を上げた時の音がよい、気持ちがいい、ますますこの車が好きになりますね、とニコニコされていました。

RBエンジンのウィークポイントがまた一つなくなり、現代のエンジンと同じ制御になり、改めてRB26の素晴らしさ、気持ちよさを痛感しています。もっとよくなるはず、こうなるはずと思い描いていたような結果になりうれしさを感じると共に、空ぶかしの4500回転を超えたぐらいから明らかに今までとの違いを感じたのと、8000回転までモーターの様に回るこの結果は予想以上でした。

HKSではドラッグレースなどを想定し、ハードにチューニングされた車両を対象にこのクランク角センサーコンバージョンキットを商品化したようですが、個人的にはノーマルからブーストアップの車両など比較的ライトな車両を対象に12ホールインジェクターや通信速度の速いフルコンを使用し当時ではなしえなかった細かい制御を行う為にこのキットを使用するのはとてもよい選択肢ではないかと考えます。

RBエンジンは時代に名を残す名機なのは周知の事実です。その名機に現代の技術を使い、当時では体験できなかった大きな感動をたくさんの方に感じて頂ければと思います。 ご相談お待ちしています

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