ZK通信

ホンダ NSX NA1 戸田レーシングエンジン Vproセッティング

きっかけはVproに興味があります、どんな感じになるのでしょうか?とご来店いただいた事でした。パワーチェックにも興味があるとお話しいただきましたので、ダイナパックに設置し全開でアクセルを踏むと、マフラーからお店の中が真っ白くなるくらいの青白い煙

 

エンジンオイルが減りませんか? オイルが一緒に燃えていると思いますとお話しした所、毎日乗るのではないけれど、その日一発目のエンジンをかけるたびに車庫が白くなるくらい煙が出るとお話しされます。Vプロを取付けするよりも先にエンジンをしっかり直したほうがいいと思います。と説明させていただくと、戸田レーシングさんのエンジンにも興味があるとお話しをされます。巡り合わせというか縁とは本当に面白いもので、数日後にS2000のエンジンのその後の様子を教えて欲しいとの事で戸田レーシングさんが訪問をされる予定になっていました。その事をお話しすると、それとなくでいいですからエンジンの仕様や金額等をきいていてもらえませんか?とお話をされその日はお帰りになられました。戸田レーシングさんが訪問されNA1のエンジンの事をたずねると、カタログなどにメニューがある訳ではないですが、S2000と同じ様な感じでメニューを作ってお見積りしますとお返事いただきました。そして戸田レーシングさんに頂いたメニューとお見積りをお客様にご案内させて頂いたところ、Vプロを含めて作業をお願いしますと、お仕事のご依頼をいただきました

と言うことで、さっそくエンジンを降ろしに取り掛かりますが、正直な所NSXを実際に触るのは初めてです。そんな宝物を僕に託してくださったお客様のありがたさを感じていると、やはり心配だったのでしょう、申し訳なさそうに、失礼に当たるかもしれませんが、よかったら使ってくださいと

整備書を持ってきて下さいました。実は作業を依頼されたときに部品屋さんに整備書を問い合わせすると、製造中止、廃版だったので、中古でも良いので手に入れなくてはと思っていたのです。失礼だなんてとんでもない。これが有ると本当に心強いのです。有るのと無いのとでは大違いです

さっそくパラパラとめくると、アルミボディーの為特殊ボルト、ナットが使用され、専用の物以外を使用すると電蝕現象で腐食が発生し、締結部の締め付け不良が発生する。専用のボルト、ナットには緑色のコーティングがしてあり外観で識別できるようにしてあると書いてあります。今までそんな事考えて整備した事ありません。整備書の始めの方からマニア心をくすぐられます

そんな予備知識を頭に入れて、ボルトを外すと確かに外すボルトすべてにペイントを確認出来ました。本当だペイント塗ってある、専用ボルトだと感心しながら作業をすすめ

エンジンがおりました

エンジンだけに分離をし

ミッションやメンバー等は二度手間ですが一度車両に戻しました

なぜなら、エンジン仕上がりの納期がおおよそ半年。その間大切なお車をお店の外に置いておくのが申し訳なかったので、エンジンの載っていない車両をお客様のご自宅に搬送する相談をさせていただいて了承をいただいた為、タイヤホイルを取り付け出来る状態に戻します

エンジンの方は戸田レーシングさんへ送りますが、メニューに無い事をお願いする関係でS2000の時の様な専用の箱は残念ながらなかったので、同級生の大工さんに木で作ってもらいました。電話をしたら夕方すぐ来てくれて、1時間くらいであっという間にC30用のパレットを作ってくれました。プロってすごい!!

そして約半年後、戸田レーシングさんよりオーバーホール+αが施されたスペシャルエンジンが返ってきました。ポートの加工や、燃焼室の容積合わせ、ハイカムなどを組み込み、鍛造ピストンなどを使用し腰下も精密組み付け、組付け後エンジンベンチで初期の当たりつけ慣らしをされた物となります

ワクワクしながら開封。じっくり観察。また一緒についてきた加工の際の数値等も目にしますが、本当に戸田レーシングさんの仕事は丁寧です

そして再びお車入庫

再度メンバーとミッションを車両から取り外し

減っていたクラッチディスクは新品に交換NSXってノーマルでツインプレートなんだ、知らなかったと感心しながら取付

写真だと簡単そうですが、ヒーヒー、フーフー言いながらミッションと連結されたエンジンをメンバーとドッキング

エンジン、ミッション、メンバーを車両に戻します。エンジンルームにエンジンが戻り少しだけ安心

エンジン搭載後はエキマニをつけたり、配線を戻したりとエンジン始動に向けて、作業をすすめます。エンジンベンチで火を入れて回していますから排気側のポートは少し汚れています

クーラントやオイルも入れてエンジン始動の準備

機械的な作業と並行しながら少しずつVプロのハーネスも作成

写真だとポンとできたように見えますが、何日もかかってハーネスは作っています。間違いがあってはいけないので、テスターで確認しながら、一本一本半田付け。本当に一歩一歩って感じで少しずづ進んでいきます

ハーネスが出来たら暫定で作ったデータをVプロに書き込み

Vプロを車に取り付けて、ドキドキしながらセルを回します。あっけなく始動

エンジン単体は戸田レーシングさんのベンチで回して確認されていますが、各部からのオイルや水の漏れがない事を数日確認します。確認しながら、イニシャル点火時期の調整などをおこないます

VプロはV型エンジンの左右バンクをグループ分けして制御する機能を有していますので、空燃比計を前後バンクに同時に取付し、前バンク、後ろバンクをグループ分けしてなるべく前後の差が出ないような制御を行います

オイル、水の漏れもなく問題もない事を確認出来たので、本格的にVプロのセッティングを行うためにダイナパックへ設置

いきなり全開にはせず、少しずつ様子を見ながら何度もダイナパックを回し、最後は全開でのセッティングを行います

緑がオーバーホール前のグラフ、今回の作業後が赤のグラフになります。ハイカムやビッグスロットルの影響で3200回転くらいまではほんの少し以前のエンジンを下回る所がありますが、それ以外はトルクもパワーも大きく向上しています。特に4000~6000回転くらいまでのトルクの厚みはサーキット等のスポーツ走行で今までより大きなアドバンテージとなる事が容易に想像されます

無事セッティングも終わりましたので、セッティングの機材を取り外しして、作業は終了となりました

歴史に名を刻む名車を触る機会をいただいたお客様に心から感謝です。整備書をみながら実際にこの車を触ることが出来た事はドキドキもワクワクもしましたし、とっても緊張もしました。達成感みたいな物が大きかったのも事実です。

納車の際にお車運転されたお客様はトルクが増えている、乗りやすいと終始ニコニコされていました。これからもお車大切にされる事だろうと思います。そんな宝物を預けてくださって、本当にありがとうございました。心の底からこの車を楽しんでいただける事を願っています。そして今後ともよろしくお願いいたします。ご依頼ありがとうございました。


動画も作りましたので、みてください

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